食生活の変化と住居の関わり

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食と住の関係は非常に深いつながりを持っています。
居住する同居人との関係の変化は個人の食生活の変化に影響を与え、反対に食生活の変化が居住する家造りに影響を与えることがあります。
現在の日本において最も大きな食と住が関係する変化といえば、やはり室内における「台所」という場所が代表的でしょう。
古い時代を描いたテレビドラマやアニメなどをみていると、台所は戸建住宅の中でも独立した場所となっており、家族だんらんをする食事の場所は、台所から廊下を隔てたかなり遠い場所にあることがほとんどです。
かつて「君子は厨房を遠ざかる」「男子厨房に入らず」といったような台所という場所を汚らわしい、できる限り入るべき場所ではないかのような言い方がされてきた時代もありましたが、現在ではDKづくりの住宅も増えてきており、むしろどこまでが台所でどこからが食卓なのかの境界線があいまいになってきています。

台所は昔の一般的な日本の住宅では、配置されるのも北向きの日当たりの悪い場所であり、水場でもあることから寒々しい、湿ったいやなイメージの場所でした。
ところが最近では共働きの家庭や一人暮らしの若者世帯が急増したこともあり、台所で作業をしながら会話することや、テレビをみたりすることができるオープン型のキッチンが一般的になってきました。
最近では女性が結婚の条件にしたい男性への要望にも「料理ができること」ということが堂々と言えるようになってきており、現在では台所は誰でも立ち入りできる自由な場所として様変わりをしました。

また別の動きとして、そもそも台所自体を必要としないという人も増えてきています。
昔ながらの賃貸住宅では、バス・キッチン・トイレ付きは贅沢な部屋とまで言われていましたが、それでも風呂とトイレは共同の部屋もキッチンはそれぞれ個別についているということは当然とされてきました。
ところが、近年の一人暮らしの若者などでは、食生活はそのほとんどを外食もしくは買ってきて家で食べる内食ですませるようにしている人が多くなっています。
包丁もガスレンジもいらない。台所にはせいぜい冷蔵庫と電子レンジさえあればよいなどという意見もかなりの場所で聞かれています。
その影響から台所機能を極力しぼった簡易なキッチンもどきしかないような部屋もあります。
最近の居住環境においては、キッチンは全く・ほとんどないと、反対に贅沢な広さと明るさを持った空間との両極化が進んでいるようですね。

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