日本家屋と畳の歴史

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畳敷きの部屋には、独特のやすらぎがあります。
新しい畳からはい草の香りがただよい、目に優しい薄い緑色の畳は、その場に横になるとついうとうととしてしまいます。
数年前までは一般住宅や賃貸アパートでも部分的に使われることの多かった畳ですが、現在では生活スタイルの変化の影響もあって、畳敷きの部屋はどんどん減ってきています。
しかしながらフローリングの洋間に改築したあとも、日本家屋では「○畳」というふうに部屋の大きさが定義されており、畳と住宅様式には切れない関係が続いています。
畳が日本の住宅に初めて登場するようになったのは奈良時代である710年くらいと言われています。
以来大きさや製法に若干の変化が加わりつつ、長きにわたって日本家屋の足元にあり続けてきたのです。

奈良時代に最初に登場した畳は、今で言うゴザに近いものであったと言われています。
当時は権力者の家にのみ使われており、畳を敷き詰める面積の大きさがその家の主人の力の大きさを示していたといいます。
平安時代になると貴族の住宅として一般的だった寝殿造りにおいては、板の間の一部に畳を敷いて、座布団や寝具のように利用されてきました。
今も日本に多く残っている平安絵巻などを見ると、畳を現在のベッドのように使い、屏風や繻子と合わせて使用している様子が伺えます。
寝具の敷物とされてきた畳が部屋全体の床材になったのは鎌倉時代からです。
鎌倉時代には家屋の作り方が寝殿造りから書院造りに大きく変化したこともあり、部屋全体に無理なく敷き詰めることができるようになったのです。
この時期、庶民の中に「畳屋(当時の呼び名は畳差・畳刺)」という職業が誕生しました。

貴族や武士などの上流階級の者の住宅にしか使われなかった畳も、安土桃山時代になると商人や町人の家としても使われるようになってきます。
江戸時代になると、長屋住まいのようなかなりの庶民階級でも畳敷きの部屋に済むことがあたりまえとなり、都市部だけでなく農村部でも畳が敷かれた部屋に住めるようになりました。
しかし日本家屋と畳が密接な関係を続けていたのは昭和までで、高度成長期に入るとともに住宅様式に西洋風のものが多く使われるようになり、畳敷の部屋はどんどんフローリングに置き換わっていきました。
現在においては畳敷は一般住宅よりも、和式旅館などで主に用いられるようになりました。
海外からの旅行者にとっては、畳の部屋は日本らしさを感じさせる人気の部屋であるようです。

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