インドネシアの山間にある舟型の家

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トラジャ族の家

インドネシアの中央にあるスラウェシ島の真ん中辺りの高地には、「タナ・トラジャ」という地方があります。
インドネシアは、いくつもの民族が住み、独特の習慣や風習が残っています。
この地に住むトラジャ族は、とくに一風変わった習慣があります。
海辺から奥に進み、標高1000メートル近い高地に行くと、不思議な形の家屋を目に出来ます。
それは舟の形をした木造の家です。

「タナ」とはトラジャ語で「土地」を意味し、つまりはタナトラジャは、「トラジャ族の地」を意味し、トラジャ族が数百年前にこの地にやって来ました。
現在の中国の南部辺りから船でやって来たと言われています。
そのため周辺の部族とは異なる独特の文化を持っています。

船のような形の「トンコナンハウス」と呼ばれる伝統家屋は、トラジャ族が海洋民族だった名残です。
屋根の両端が反り返ったこの家を遠くから見ると、林や田園に浮かんでいる舟のように見えます。

この木造の伝統家屋は、現在住民は近くに現代的な住居を建て、そこに住んでいます。
こんな伝統家屋を造らなくても、現代的な住居の方が機能的です。
このトンコナンハウスは、現在のトラジャ族にとっては無くても生活に支障はないはずです。
しかし実はこの家は、数十年前より増えており、年々次々と建てられています。

力を示すシンボル

トンコナンハウスには2種類あり、住居と穀物貯蔵庫としての役割を果たします。
一回り小さい穀物貯蔵庫は、住居に向かい合うように建てられ、どちらも高床式であり、かつてはその床の下の空間で家畜を飼ってました。
しかし今では、家畜を一緒に飼うことは衛生面から禁じられているようです。

高床式のために、ネズミなど穀物を食べる動物が上がってくるのを防ぎます。
この伝統家屋に人が住むことは、現在はほとんどありません。
室内は狭く、窓もほとんどないために、現代の家と比べると住みにくいのです。

人が住まないならば、ただの物置になっていまいます。
さらには現代の住宅よりも手間もお金みもかかり、わざわざ新しく作るメリットはありません。

しかしトンコナンハウスは、今ではその人物や村の力を示すシンボルのようなものになっています。
あの村のあの一族の土地に、トンコナンハウスが新しくいくつもできたならば、それは力とお金があるからという証明になります。
日本でお金持ちが、高級車などを持つような感じと似ているのかもしれません。
そのために、今では実用的に使うためというよりは、一種の見栄と言っても良いでしょう。
村の広場に、ある時突然8つものトンコナンハウスができ、村の権力を示すというようなこともあります。
現代の家よりコストがかかりますが、中には安くするために、柱がコンクリートの家もあります。

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