数寄屋造と柱の木材

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現在、日本における木造住宅の基礎的な構造として採用されているのが「数寄屋造」です。
数寄屋造とはもともと茶室として作られる建物の構造を住宅用に用いた建築様式であり、
日本住宅ではおなじみの床の間や違い棚といった建築装飾があることが特徴となっています。

数寄屋造ではそれまで一般的な住宅として建築されてきた書院造りと違って
華美な天井画や金箔を用いた襖などといったものがなく、
質素な装飾を機能的に配置していることが特徴となっています。
数寄屋造の「すきや」というのは「好きに任せて作った家」という意味からきているもので、
もともとが茶室ということもあって室内には建築者それぞれ独自の工夫がされることもよくあります。

数寄屋造が建築様式として珍しいのは、材料として自然そのままの木材を使用し、
それを室内の飾りとしてうまく取りいれているという点です。
もっともわかりやすいのが柱で、数寄屋造における柱はきちんと削って整えたものばかりでなく、
切ってきた丸太がそのまま使われていることがよくあります。

このような丸太そのものを柱として使用したものを「丸柱」といい、
四面を削って四角い状態にした「面皮柱」とは区別して扱われます。
丸柱の場合、木材の自然な丸い曲面を室内に持ち込むことで
2つと同じもののない和の自然風景を室内に感じさせることができます。
一方で面皮柱では四面を手斧で削って美しい木目を表面に浮き上がらせることができるため、
木肌の風合いを模様として見せることができます。

丸柱にもいくつかランクがあり、より希少な材木を材料とすることでその家の価値を上げるものとされてきました。
京都の北山地方にある北山杉を使ったものは数寄屋造の銘木として知られており、
この杉を用いることが一つのステータスともなっていました。
北山杉を使った丸柱のことを「北山丸太」といい、
かつては朝廷の御用木として使用されてきたという過去があります。

自然の材料をそのまま用いるとはいえ、伐採したそのままの杉を使用するわけではありません。
伐採した杉はまず皮をはぎ、時間をかけて乾燥をさせていきます。
ひび割れがおきない程度に乾燥ができたら木肌を丁寧に磨いて仕上げをします。
仕上げ方法もつるつるに仕上げる磨丸太や、黒褐色のカビをわざと生えさせることにより
斑点状のサビに似た模様を作る錆丸太などがあります。
中でも最高級なのは北山杉の天然出絞丸太と呼ばれるもので、
現在でも1本100万円以上の値段がつくこともあるほどです。

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